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Dancing in the spirit of "Book of Changes"

Updated: Sep 20

舞踏家 小柳百合子が舞う京都三部作「リユニオン」お楽しみいただけましたでしょうか。


Crimson Shiva at the Puja Hall.
京都洛西 正法寺の春日不動堂にて、不動明王への奉納舞を終えて(2023年撮影 by Warihima Mikami Studio)

作品の随所にこめられた隠喩を読み解くには、百合子パフォーミング・アーツ公式ユーチューブ・チャンネルにて公開中のVlog(ブイログ)副音声解説もご活用くださいませ。



Dancing in the spirit of "Book of Changes"

京都三部作を「リユニオン」と題しました。和訳としては<融和、和合、再会、同窓会>というニュアンスになりますでしょうか。日本人としての最大の美徳である「和の心」を作品として表現する試みでした。シルクロードの終着点である奈良には、インド、ペルシャ、中国、韓国と様々に異なる文化がたどり着いています。奈良の仏教文化や中国式建築の面影を残して遷都された京都において、それらの混合文化は、より一層、雅に洗練されました。


インドの踊りを舞うにあたり、インド文化を完全にインドのものとして再現するのも正解ですし、日本人として再構築するのもまたひとつの楽しみです。このたびは、名刹を舞台に、後者の手法でフュージョン作品にいたしました。




第一幕は大河ガンジスと題し、シヴァ神がその額でうけとめたガンジス河の振付表現を、ヘイモント・デヴァラ氏よりいただきました。シヴァ神を表現する際、浅黒い肌に着目して、黒い銅像として彫られることも多いです。日本に伝播する過程で、シヴァ神が大黒天として表現されたのは、シヴァ神の黒色に共鳴した仏師たちによる解釈ではないでしょうか。


撮影の舞台となった京都洛西 正法寺は、六大黒天霊場でもあり、元気で明るい「走り大黒天」様がいらっしゃいます。アプサラ・アーリーの踊りを収録する際、走り大黒天さまが、斜め前から見守ってくださいました。



日本人に馴染の深い陰陽五行説では、水面は黒色として表現されます。百合子は、シヴァ神のテーマカラーである黒色に、大河の雄大な水面を感じました。その感覚は、日本人としてのDNAに由来するのかもしれません。


シヴァ神の踊りには、水と火の両エレメントが統合されていると思います。火のエレメントとしては、ご焼香の所作や、袖にかかった火の粉を振り払う振付にも表れています。


この火の要素に共鳴して仏師がシヴァ神を彫ったとき、不動明王さまが誕生したのではないでしょうか。日本人が不動明王を描くとき、どの絵師の作品をみても、赤が強調されます。


第三幕を祝祭ディワリと題したのは、護摩焚の神聖な火で浄化され、純白の灰から再誕生する過程をお祝いしたかったからです。シヴァ神は、破壊と再生を司ります。



ディワリとはインドの旧正月です。旧年から新年への移行を、古い自分を脱ぎ捨てて新しく生まれ変わるサイクルと重ね合わせました。奉納舞の最後には、真白な灰をたたえた香炉も映し出されていますので、ぜひご覧ください。




第二幕は恩寵-月の都と題し、帝釈天のために火の中に飛び込んだ勇敢なうさぎ(仏陀の前世)をイメージして、ぴょんぴょん飛び跳ねるような元気なアプサラ天女に仕上げました。仏陀もうさぎも、耳が長いですね。仏陀は、お洒落なピアスで耳たぶが下に伸びています。振袖の、下にのびる長い袖を見たスタッフが「うさぎの耳みたい!」と感想をくれました。



天女アプサラの舞は、水の妖精であるアプサラにふさわしく、水流のフローを意識した演出にしています。



不動明王への奉納舞では、マイトレーヤ(弥勒)のように思惟しながら舞う演出としました。これも、水のエレメントに共鳴しての、独自の表現です。


マイトレーヤを想う時、道教で大成された「タオ」のゆったりとした精神を感じます。火と水のエレメントのダンスは、まさに陰陽のシンボルそのものです。男性的なシヴァ神や不動明王と、女性的でありながら強さも兼ね備えたアプサラ天女や観音を結い合わせる作品を創ることができ、演出家/表現者としての大きな夢がひとつ叶いました。




大河ガンジスがつなぐ悠久の時の流れと輪廻転生は、百合子にとっては、Book of Changes(周易)の在り方にも通じます。日本人として受け継いだ中国の知恵も大事にしながら、今後もこの京都三部作を、さまざまに美しい時節をとらえてお届けできますように。オーディエンスの皆様と一緒に、作品を育てていけましたら幸いです。


Book of Changes

周易については、ウィキペディアなどネット文献を参照して頭で理解しようとすると、支離滅裂で混乱されると思います。日本の神社仏閣などに自然にとけこみ伝承されておりますので、古刹巡りを通じて、体感することを推奨します。


(記事公開日:2024年3月4日、無断転載不可)


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